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「ゆーーずっ!一緒に帰ろ」
放課後になって帰る準備をしていたら、急に横から映美佳が現れた。
「…あれ?映美佳、早いね」
「うん。うちのクラス、早めに終わったからね。勝手に教室入っちゃったけど、放課後だからいいよね」
「うん。みんなほとんど帰っちゃったし、大丈夫だよ」
「しっかし一番後ろの窓際とは、いい席ゲットしてんじゃん♪」
えへへ…と笑っていると、前の席の瀬川くんが急にこっちを向いてきた。
「杉田って、『ゆず』って名前だったっけ?柚って、くだもの???」
「え?」
何のことだかよく分からず軽く混乱していると、瀬川くんがカバンを持って席を立ち上がった。
すると、映美佳が私に代わって説明を始めた。
「柚ってあれだよ、ミカンみたいなやつだけど、酸っぱい柑橘系。ゆず湯とかゆずこしょうとかあるじゃん」
「ゆず湯……、ああ、そういやばあちゃんが冬に風呂に入れてた、あの黄色いやつかあ。杉田の名前、おもしれぇな」
お、面白い……って、
褒め言葉?
けなし言葉???
「じゃあまた明日な。『杉田柚』ちゃん♪」
どう反応していいのか分からなくてオドオドしていると、瀬川くんは満面の笑みで私に手を振って、仲のいい男子のところまで走って行ってしまった。
「……ぷっ。やっぱり柚って、反応しきれてない…」
そんな私の様子を見た映美佳は、手で口元を隠しながら吹き出した。