馬場さんが指差したところを見ると、昨日まで馬場さんと仲が良かった3人が楽しそうに固まってリコーダーの練習をしていた。





「やっぱ俺の言った通りじゃねえか。馬場ってヒドイ奴だな〜」





瀬川くんの声はさっきと同じくらい明るかったけど、その言葉には皮肉が込められていた。





だけど……



「…うん、分かった」





私には馬場さんを止める権利が無い。





馬場さんが誰とリコーダーの練習をしようと、それは馬場さんの自由だと思うから。






「あかねちゃーん!早くぅ!!」





私と瀬川くんの表情を見つめて離れ難そうにしていた馬場さんだったけど、3人に大声で呼ばれて、反射的に後ろを向いた。





「ホント、ごめん!!」






私に謝りの言葉だけを残して、馬場さんはその場を駆け足で去っていった。










「あんな奴放っとこうぜ、杉田」





瀬川くんが一瞬だけ、馬場さんを睨んだような気がした。





けど次の瞬間、瀬川くんはリコーダーを口にくわえて、たどたどしく演奏を始めた。





私は慌てて教科書を見て、瀬川くんの演奏を音符をたどりながら聞くしかなかった。












その15分後



瀬川くんは見事にリコーダーテストで合格をもらった。





すごく嬉しそうに私にお礼を言ってくれたけど、私はやっぱり何を言っていいか分からなくて、照れ笑いぐらいしかできなかった。










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