「…え?」
「やっべぇ、ここの指使い、ムズくね?」
「え、どこ?」
私の方こそ、やばい。
瀬川くんの演奏、全然聞いてなかった……。
「ここ、ここ」
瀬川くんが教科書を指差す。
私は、瀬川くんが指差した音符の場所を見た。
「えっと…、ここは……」
ああ、私、すごく説明下手くそ……。
全然言葉が思い浮かばない。
「とりあえずゆっくり吹くから」
…と、私はそこの部分を吹こうと思ってリコーダーを取り出した。
♪〜♪〜♪〜♪〜
「おお〜!!すげぇ!なるほど、そういう指使いかぁ」
私が吹き終わると、目の前に感心した顔をした瀬川くんの顔があった。
「…こんなので分かる…?」
「うん!!すげー参考になった!!じゃあもう一回吹くから、見ててくれない?」
そして瀬川くんが意気揚々とリコーダーを取り出した時……
「…杉田さん」
さっきとは明らかに違う、更に暗い表情の馬場さんが私の元に戻ってきた。
「あっ、馬場が戻ってきた!ちゃんと練習しろよぉ」
リコーダーを吹こうとした瀬川くんも馬場さんの存在に気付き、明るい声をかけた。
「いや……、あのさぁ、あっちで練習することにしたから……。ごめんね」
「え…?」