「とりあえず馬場、行ってこいよ。みんなでここにいたら、俺も杉田も迷惑なんだけど」
「…瀬川、案外薄情だね」
「別にそうじゃねえよ。練習できないだろ?それに女子の話し合いに俺がいても邪魔だろうし」
「だからぁ!馬場さん、すぐ済むから!」
結局馬場さんは力で多田さんに負けて、そのまま引きずられる形で多田さんと細井さんについていくことになった。
「はぁ〜。女子って何かめんどくせえよな」
そんな馬場さんを見送りながら、瀬川くんは軽くため息をついた。
「……うん」
どうしよう…?
瀬川くんと二人になっちゃった…。
しかも、さっき、何て言ってた???
『俺、単純に杉田と話してみたかっただけだから』
確かにこんなこと、言ってたよね…?
「さっさと練習始めよっか。俺今から吹くからさ、間違ってたら指摘してくれない?」
「うん…、分かった」
そんなこと、言われたことなかった。
しかも、男子に言われるなんて。
そんなちょっとドキドキが速まった私なんかに気付くことなく、瀬川くんはリコーダーを口にくわえた。
♪〜♪〜
「…あっ、間違えた!」
瀬川くんが演奏を始めたと思ったら、かなり最初の段階でとちったらしく、いきなり大声を上げてきた。