「俺もこの前、多田達に『杉田に話しかけてるのは同情だ』って言われて、色々考えてたんだけど、違うんだよ、俺は」
「何で瀬川は違うって言い切れるのよ?」
「俺、単純に杉田と話してみたかっただけだから。けど、馬場の場合はそうじゃなさそうに見えたから」
「わっ、私だって……」
「何?ちゃんと杉田の前で、杉田のこと本当は気になってたって言い切れる?」
瀬川くんの目線が、教科書から馬場さんの顔に移った。
その視線は、とても真剣だった。
「あのさぁ、馬場さん。ちょっといい?」
その時
後ろから、とある女子の声が聞こえてきた。
私達3人は、同時に声のした方へ視線を向けた。
「なんだ、多田と細井かよ…」
ポツリとため息交じりにつぶやいたのは、瀬川くん。
「今は瀬川に用事はないの。馬場さんなんだけど」
チラリと瀬川くんを睨んだ多田さんは、馬場さんの腕を軽く引っ張り始めた。
「来てもらっていいかな?」
「え…?なんで私が?」
呼び出される意味がよく分からない馬場さんは、多田さんの手を離そうと必死。
「馬場さん、自分が何やったか分かってるんでしょ?」
「何の話?」
それからしばらく3人の押し問答が続き、私も瀬川くんもリコーダーの練習ができなくなった。