確かに社長の松岡の前ではそんなことはしないのだが……。


 俺はパソコンを開き、立ち上げて、メールボックスを開く。


 業務用のメールに目を通し終わってから、書類を作るため、キーを叩き始める。


 企画部で一日中パソコンだ。


 合間にトイレ休憩に立つこともあったのだが……。


 俺は午前十一時過ぎに一度トイレに行った。


 男子用トイレで用を足していると、不意に背後に何かおぞましい気配を感じ取る。


 ふっと振り向くと、ダンダラ模様の服を着て、額や体のあちこちから血を流した武者が二人いて、ニヤリとこっちに笑い掛けてきた。


「わっ」


 一瞬翻った俺は冷静になり、霊の威力や辺りに漂う不穏な空気が鎮(しず)まるのをじっと待つ。


 霊が俺の首筋に刀を持ってきた瞬間、霊の手からは真っ赤な血がポタリと滴り落ちた。


「な、何だこれ……?」