内心そう呟きながら。
何故ならば。

彼の想い人は人間ではなく――…エルフだった為に。


エルフとは、外見的には人間とはほぼ変わらないが、特徴的なのはその耳だ。
彼らの耳は、人間のモノよりも何倍も長く、一目でそれと解るものだ。
そして、大体の者達は外見的にとても美しい。
だが、プライドが高くあまり人間の居る場所には現れず、大抵が森の中に集落を作り、そこで暮らしているという。



(…一人、エルフが居るって言うのは聞いていたが…まさか、こんな事になるとは…な…。)

「気持ちなんか、どうにもならないし、駄目だと言われたら余計に意地になるだろうがな、アレは止めておけ。」

「…エルフだから、ですか?」

「そうだ。…人間なら正妻じゃなくても妾なんかにでも出来るがな、アレばっかりは無理だ。
相手が悪すぎる。」

「ですが…!!」

「よく考えろ。
お前には婚約者が居る。お前のことだ。正妻以外なんて考えても居ないだろうが。
他の女ならまだ希望も有るが…彼女は駄目だ。冷静になって考えてみろ。」

ジークの言葉にティースは黙り、休めていた手を再び動かし出し、食事を再開する。