「…誰か気になる女でもできたのか…?」

ジークは驚きを隠しつつ、平静を装い尋ねた。

「……まぁ…」

「…例の婚約者か?」

その問いに口を噤み、俯き黙る。其れを見て、ジークは彼の好意を寄せている相手が、婚約者では無いことを読みとった。
自分自身もそうとは云え、この学院を卒業すれば家を継ぐために結婚する事が決まっている。
そのため、好きな相手が出来たとしても…。

(今の時期にそんな相手を見つけなくても…)

ジークは内心そう呟く。
事実、後半年もすれば自分はともかく、彼は間違いなく卒業だ。
そうなれば、あまり間を空けずに『結婚』ということになるだろう。

「まぁ、有るか、無いかと聞かれれば『有る』な。」

取り敢えず、聞かれたことには答えよう。そう思い、ジークはティースの問いに答える。
その言葉に、ティースはその端正な顔を上げる。
少しの期待を込めたような面もちで。
だが、ジークの言葉は冷たいモノだった。

「ただし、結局は『遊び』だ。
お互い好き合っていても最後は『遊び』でしか無い。」

「遊び…」

「仕方ないだろ。自分たちの立場を考えると。
第一、向こうだって結局は…そんなこと解ってるさ。」