少女は受け取ったタオルで腫れ上がった足を冷やしながら、

「…帰らないの?」

と、ティースが座ったことに、首を傾げて尋ねる。

「一人にしてはおけないでしょう?
私のせいでも有りますし。それに、待っている間話し相手にでもなるかと。」

そう言いながら、ティースは少しだけ俯く。

学院内とは云え、密室で二人だけ。
外からは、ガヤガヤと多少なりとも声や、色々な音も聞こえるが…

ティースにしては、どんな理由であれ『好きな女』との二人だけの時間。
これから先、こんな事が無いかも知れない。そう思うと、ここから離れるわけにはいかなかった。

「確かに、こんなところで一人は退屈かも…。結局、本も借りれなかったし…
あぁ、そう言えば私の名前まだ言ってなかったわね。
フレイアって言うの。」

「フレイア…」

「そう。もっとも、人間に解るように言ってるだけだけどね…。」

「…少しだけなら、エルフ語も解りますが…」

ティースがそう言うと、フレイアは怪訝そうな顔で彼を見る。