ティースは暫く館内を探したが、結局彼女を見つける事は叶わなかった。
仕方なく、手にしていた本を戻しにそれの有った棚へ行こうとして、足を止めた。
(…彼女の持っていた本は…)
先日、初めて出会った時の事を必死に思い出す。
(…確か…)
『この本、一度読みたかったんです。』
そう言っていた事を思い出したのだ。
もし、その本を気に入っていたのならば。
そして、それが思い違いでなければ…
そう思うと、ティースは本を返すのは後回しにし、先日彼女と会った本棚へと向かった。
(…行って、居たとしたら私は…どうしようって云うんだろうか…)
そんな考えが頭をよぎった。しかし、足は止まらない。
ただ、会いたかった。
また、笑顔が見たかった。
ほんの少しの間でも良い。話がしたかった。
それだけ。