「ふあぁ~あ…眠い。」
大あくびをしながら八崎は校門を通り過ぎた。
風薫る五月。
季節は初夏へさしかかり、校内の草木も青々と茂っている。
少なくとも植物だけは平和そうだな、と八崎は思った。
八崎の通う東郷高等学校は、都内に名高い不良校だ。校内中に施されたスプレーの装飾がそれを物語っている。
在校生は中学時代に問題を起こした生徒ばかりで、面子の悪さは少年院なみ。
近隣では進学率五パーセント未満とも噂されていた。
(登校するのかなり久しぶりだな。前に来たのはいつだったか…。覚えてねぇ。)
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