男女数名に聞いて回ったところで、彼は席に戻ってきた。
 



「結だってさ。椎名結。で、それがどうかした?」
 


やはり、と八崎は思った。



しかし、いちいち長谷部に経緯を話すこともないだろう。
 

「……いや、知り合いに同姓のヤツがいただけ。まあ違ったけど。」
 


「あっそ。あの後どこかで見かけて、気に入ったから聞いたのかと思った。」
 


「まあ、あながち間違いじゃないけどな。」
 


八崎は小声でぼそっと呟いた。
 


「え、何か言った?」
 


「いや、何でもない。」