「響、大丈夫?いいよもうやめて。私、行けなくてもいいから」

「全然……OKだぜ。必ずおまえを……行かせてやるって。……体力に……は………自信ある……んだから。このくらい……チョロいって」

「でも息が苦しそうだよ。汗もかいてるし、ちょっと休めば?」

「平気……だって………」

「だけど今にも戦闘不能になりそうだし――」

 未央を負ぶって、響は学校の屋上へ続く階段を登っていた。

 昼食の弁当を、屋上にいる未央の友だちと一緒に食べさせるためだ。

 教室で食べるからと未央は断ったのだが、響は「俺が連れて行ってやる」と言って聞かなかったのだ。

「でも……未央がそんなに……言うなら………ちょっと休もう……かな」

「うん。そうしてよ。私、気兼ねしちゃう」

「分かっ……た……」

 階段の踊り場に未央を降ろして自分も座り込む。

 汗をかいて肩で息をしている響を見て、未央は微笑んだ。

「ありがと、響。もうここでいいよ」

「何で?せっかくここまで来たんだぜ。屋上すぐそこじゃん」

「食べたらまた教室まで降りなくちゃならないし、それに――」

「ん?」

「私、ここで響と二人で食べようかな―― とか思って」

「へ――?」

 途端に響は笑顔になった。

「俺と?」

「うん。一緒に食べてくれる?」

「も―― もちろんだぜ!あ、でも俺、もうさっきの休み時間に弁当食っちゃったんだ。失敗した……」

 響は悔しそうに指を鳴らした。

 未央が笑いながら弁当の包みを取り出す。

「大丈夫。私、余分に作って来たから響も食べていいよ」

「ホント?やったぜっ!未央の手作りじゃん。じゃあさっそく――」

 響は卵焼きに真っ直ぐ手を伸ばした。