「リフォーム工場の方へ持って行くらしいです。手直しするとかで」

「そうですか。もう持って行って結構ですよ」

「あ―― はい」

 未央は返事をすると、キャスターを押してエレベーターの方へ歩き出した。

 二歩、三歩と足を進める。

 そのとき――

「お嬢さん」

 今度は警備員に呼び止められて、未央はその場に凍りついた。

 いったい何の用なのだろう?

「何ですか?」

 ドキドキしながら振り向くと、警備員は顎で未央の足を示した。

「足、どうしたんです?」

「さっきこれが倒れそうになった時捻っちゃったみたいです」

 心の中でホッとしつつも、肩を竦めて少し困った様に微笑んで見せる。

「そうですか……すみませんでしたね。大丈夫ですか?」

「いいえ。気になさらないでください。湿布でもすれば直ぐに治りますから。じゃあ失礼します」

 すまなそうに頭を掻いた警備員に答えて、未央はまた歩き出した。

 エレベーターのボタンを押す。

 やって来たそれに乗り込み、ドアを閉める。

 途端にうずくまって足首を押さえた。

「助かった………」

 大きく溜め息を吐いた未央の頭の中には、千聖の顔が浮かんだ。

「千聖―― ありがとう。もうこれで二度も助けられちゃったね」

 未央はニッコリ微笑んだ。



…☆…