「神部!何故だ !? 彼女が―― 秋江さんがいったい何をしたっていうんだ !!」

「言っただろう?後始末はちゃんとさせてもらうと。今のはこのあいだ君に邪魔をされて、し損じた分をこなしただけだ。それと……違約料をいただこう」

 神部はそう告げると銃をポケットにしまい、代わりに小さな黒い箱を取り出してボタンを押した。

途端に、先程とは比べ物にならない大きな音と振動が身体を襲う。

「きゃっ――」

「爆発?」

 倒れそうになった未央を抱き留めて、千聖が呟いた。

 何事も無かったかのように微笑を浮べ、神部が答える。

「そう。爆弾だよ。今のは一発目だ」

「一発目?」

「あと三発。一発目に連動して、順々に爆発するようにしてある。そして、四発目でこの船は海の藻屑になる」

「馬鹿な!そんな事をしたらおまえだって――」

 裕一の言葉を遮って、神部が続ける。

「心配は無用。私はそれまでにここから消えるさ。船と共に沈むのは、神部伸宏という名前だけだ」

「逃がすものか!おまえは私の罪を証言するための大事な証人なんだ。一緒に警察へ行って貰う!」

 言うや否や、裕一は神部にしがみついた。

 神部は冷たい目で裕一を見据えた。

「私はまだ逃げはしない。あんたに違約料をもらうまでは」

「違約料だと?」

 神部の胸倉を掴んだ裕一が、怪訝な顔で相手を見上げる。

「そう。途中で契約を解除、あるいは変更した場合は違約料を貰う事にしているんだ。なにしろ私の楽しみを奪うのだから、それ相応の償いはしてもらわないとね。自らの命で――」

「な――?」

 直後――

 神部は腕時計からワイヤーを引き出すと、それを素早く裕一の首に巻き付けた。