慌ててソファーに座り直し、それからカップを手に取ってコーヒーを一口飲む。

 なんとか心を落ち着かせて、響は話を続けた。

「その事、未央は?」

「知ってる」

「―― それで?」

「両親が死んで暫く経ったある日、俺は両親の死に疑問を持った。事故死では無い。誰かに殺されたのだと」

「殺された?」

「ああ。親父が俺に残していたはずの、影を持つ石が無くなっていたからだ」

 影を持つ石――

 それがいつか千聖の母親から聞いたウサギや鹿の石だと、響は理解した。

「その石は七つ。全部集めると、幸せをもたらす宝が手に入ると言われている物だった。石の示す宝とは何なのか?誰が石を奪ったのか?誰が両親を殺したのか?俺はその疑問を晴らすため、石を捜しだし集める事に決めた。人を傷付けること以外なら、どんな手を使っても」

 千聖の言葉に、響はゴクリと唾を飲んだ。

「そしてあの夜―― 七つのうちの一つを手に入れた夜、未央に出会ったんだ」

 あの夜とは、響が未央と映画を見に行った3度目のデートの日だ。

 後悔がまた戻って来る。

 もしも自分がちゃんと家まで送り届けていたら、未央は千聖に出会わなかったし、こんな事に巻き込まれる事も無かったのだ。

 そう思うと悔しくて、響は膝に置いた手をギュッと握り締めた。

「未央は誰かに追われていた。高校三年だと言っていたが、明らかに普通の高校生とは思えなかった。どう考えたって普通の高校生が、銃を使うような奴らに追われるわけ無いからな」

「えっ―― 銃を?」

「ああ。その後は知ってるだろう?」

 その後は、未央とここへ来た時に聞いた話しだ。

 響が肯く。

「そういう事だ」