響の怒りを受け止めることで、未央が神部に連れ去られたのは自分に関わったせいだという罪の意識を少しでも軽くしたかったのだ。

「畜生!畜生―― 畜生……」

 振り上げていた手を止め、響は今度は静かに話し始めた。

「あいつ……急に現れて、未央を連れて行こうとしたんだ。それで俺――」

 その時、響が何を思って何をしたのか。

 そんな事は今の響の姿を見れば、何も聞かなくても理解できた。

「だけど……護れなかった。俺は未央を護れなかったんだ!」

『私行きます。あなたの言うようにします。だから、響には手を出さないで !!』

 あの時の未央の言葉が浮かんできて、悔しさに唇を噛む。

 未央が連れ去られたのは、本当に千聖のせいなのだろうか?

 自分の力不足のせいなのではないのか?

 そんな思いが湧き起こってくる。

「何だよ……何なんだよ……何で未央を……」

 響はフラリと立ち上がると、額を床に擦り付けるようにしてうずくまった。

 一緒に居たのに、未央を護れなかった自分が悔しかった。

「未央……未央ぉぉぉ……」

「響……」

 千聖は、声をあげて泣き出した響の肩にそっと手を置いた。



…☆…