少し肩を竦めて微笑んだ未央が、コーヒーを口に運ぶ。

 それからまっすぐに前を向いている千聖に目をやって、ふと手を止めた。

 胸がドキッとした。

 千聖の瞳が、例えようが無いほど淋しそうに見えたのだ。

 未央は千聖から目が離せなかった。

 時々傍を通る車が、ボロボロになった千聖の車を不思議そうに見ながら追い越して行く。

 二人は黙ったまま、しばらくの間ラジオから流れる音楽に耳を傾けていた。

「―― 千聖は何処に住んでるの?」

 ふいに未央が訊いた。

「俺か?俺は藤塚駅前にあるマンションだ」

「そう。じゃあ私もそこで降ろして。近いから」

「分かった」

 車は再び深夜の道を走りだした。