「それって暗に私を嫌いだって言ってるの?」

「ああ、少なくとも好きではない」

 途端、真紀子は千聖の顔を覗き込んだ。

「なに?ずいぶん正直になったじゃない。プライベートで何か良い事があったの?」

 窺うような視線に、千聖は口を閉ざした。

「未央さんって言ったっけ?あなたを変えたのは彼女の力―― ってとこかな」

「いや、君のおかげだよ」

 真紀子は不思議そうな顔をした。

 しかしすぐに肩を竦めて微笑んだ。

「ま、いいわ。あなたには逃げられたけど、コメットは逃がさないから」

 また女神に視線を戻す。

(片を付けるしかないか――。計画実行のチャンスは中庭に人がいて、センサーが止められている時間しかないんだから)

 心の中で呟いて千聖もフッと笑った。






「寒いわね」

「ああ、かなり冷え込んで来た」

 閉館時間と共に噴水は止まっていたが、それでも水の近くに居るというのは結構寒いものだ。

 千聖が時計に目をやる。

「もう二時だ」

「―― 今日も無しかなぁ」

「そろそろ引き上げるか?コメットは二時以降には仕事をしていないんだから」

「……あ、でもちょっと待ってて」

 自分はこれまでのコメットの行動パターンを把握していると言わんばかりに千聖が告げると、真紀子はそう答えてベンチから立ち上がった。

「なに?」