「やっぱりコメットにインタビューなんて無理だ。もういい加減諦めろよ」

 千聖は真紀子に向かって、ホットコーヒーの缶を差し出した。

 美術館の中庭。

 建物の陰。

 時間は夜の十一時。

 真紀子はこの美術館の責任者と知り合いのようで、何だかんだと理由を付けてこんな時間にここにいる許可を貰ったらしかった。

 急いで仕事を片付けて食事を済ませ、真っ直ぐにここへ来る。

 そんな生活が一週間近くも続いていて、千聖はいい加減イライラしていた。

 真紀子が言い返す。

「どうしてそう思うの?あなたはティンクにインタビューしたんでしょ?だったらコメットだって無理では無いと思わない?」

「あの時はたまたま遭えたんだ。それにティンクとコメットじゃ違う」

「何処が違うのよ !?」

 同じようにイライラしているらしく、真紀子も千聖に食ってかかった。

「ティンクはまだ子供だ。おおかたの行動パターンも決まっている。でもコメットには色々な知識がある。どんな手を使って来るかなんて予測できないさ。第一、ここに石がある事をコメットが知っているかどうかだって分からないじゃないか」

「大丈夫よ、私が調べられたのよ。コメットが知らないはず無いわ」

「フッ……変な理屈だ」

 千聖は腰に手を当て、少し顎を上げて笑った。

 その人を馬鹿にしたような態度に、真紀子が益々ヒートアップする。

「とにかく私は絶対諦めないわ。彼がここに現れるまで続けるから覚悟しておいて」

「しつこいんだな」

「あら、初めてあった日、気付かなかったの?」

 真紀子は千聖をチラリと見た。

「しつこい方がいいって人も中には居るのよ」

「居たらお目に掛かりたいね」

 皮肉っぽい言葉を発し、片方の口角を上げた千聖に今度は真紀子が笑う。