「俺は両親を亡くしてからずっと一人で生きて来た。この先もそうして行くつもりだった。それに、俺はこんな生活をしている。だから誰にも関わらない方がいいと思っていたんだ。あんたともそうして行くつもりだった。なのに……気が付いたら、いつのまにかあんたを好きになっていた。だから……放っておけなかった」

「千聖……」

「あんたが好きだ―― 未央……」

 千聖が顔を近付けてくる。

「千聖……今、私のこと未央って……千聖、千……」

 唇に千聖の息が掛かる。

 未央はそっと目を閉じた。

 抱き締められて千聖のシャツをギュッと掴む。

 自分の心臓の音が聞こえて来る。

 何故だか涙が溢れてくる。

 それはとてつもなく長いような、短いような……そんな一瞬だった。

 ゆっくりと唇が離れる――

 その途端、紅潮した顔を見られるのが恥ずかしくて、未央は千聖の胸に顔を埋めた。

 最初に会った夜に嗅いだ煙草の匂い。

「嬉しい……千聖、私も千聖が好き。いつからか―― ううん、きっと初めて出会った時からそうだったの」

 サワサワと風が吹き、未央の茶色の髪を撫でる。

 胸がキュッとなって涙が出た。

「未央……おまえが好きだ………」

 未央の涙を指で拭うと、千聖はもう一度顔を近付けた。





…☆…