同時にクラッチを切り、右脚の踵でアクセルを踏んだまま爪先でブレーキを踏む。

 前輪をロックされ、後輪が煙を上げながら右へとスライドする。

 路面へ黒いラインを描きながら、大きく向きを変える。

「嫌ぁあああっ!やめてぇえっ!」

 未央はジェットコースターに乗った時の様な強い遠心力の中、ボンネットの先の真っ黒な空間を見て思わず悲鳴を上げた。

 後ろについていた車はブレーキを掛ける間も無く、千聖の車の横をそのまま真っ直ぐ走り続け――

 暗い海の方へと消えた。

 直後に派手な水音と飛沫が上がる。

「ザマあ見ろ!俺の車をこんなにした罰だ」

 千聖はルームミラーで後ろを見ながらニッと口角を上げると、ポケットから煙草を取り出して火を付けた。



…☆…