「いい加減にしろよ。人を勝手に殺したり幽霊にしたり。全く呆れるよ」

「じゃあ……千聖、お化けじゃ無いの?生きてるの?」

「あたりまえだ!怪我一つしていない」

「生きてるのね?」

「だからそう言って――」

「千聖!」

 名前を呼んで、未央が胸に飛び込む。

 予想外の行動に、千聖は言葉を止めた。

「良かった。ホントに良かった――」

 未央は心臓の鼓動を確かめるように、千聖の胸に耳を当てた。

「うん、ちゃんと動いてる。トクン、トクンって……」

 未央の温もりを感じて目を閉じると、無意識のうちに千聖はそっとその髪に触れた。

「千聖が死んじゃったかと思った。だってリトル、男の人には噛み付くって聞いてたから――」

 その言葉に一瞬微笑む。

 しかし、それがいけない事であるかのようにまた直ぐいつもの表情に戻り、未央の両肩を掴んで顔を覗き込んだ。

「あの犬、あんたが連れて来たのか?」

 未央は黙って肯いた。

 予想通りの答えにまた溜め息をつく。

「それじゃ、いったいどう言う事か話して貰おうか?」

 千聖はまるでこの家の主であるかのような顔をして、ソファーの上にどっかりと座っているリトルに目をやった。