普通ならここは桐先輩だと思うのが妥当だろう。


それか魁迩。


まぁ、魁迩の確率は1%に満たないぐらいだけどね。


本性を知ってるのはあたしだけのはずだから。


でもねー…ダメだよ。


誰だか分かるあたしは世界新記録が狙えるんじゃないか?ってくらいの勢いでその場を走って後にした。




腹黒王子…おそるべし…。


深い息を吐きながらズルズルと屋上の床に座り込んだ。


屋上からの眺めは絶景なんだよ。


キラキラと太陽の光りを反射する海に水平線が見えない程綺麗な空、深い緑の森。


ここに来れば嫌なことも、どんなに辛いことも忘れられる。




そんないつもと変わりない風景に心を奪われていたみたい。


誰かが入ってきたのに全く気づかなかった。


「へぇ? 逃げたかと思えばこんなとこでのんびりしてたんだ?」


屋上のフェンスにくっついて見ていたので両脇に手をつかれて逃げ場を無くしてしまった。


言葉に詰まる。


耳元に息を吹きかけられて身体がビクッと跳ねた。


クスクスと小さな笑いと意地悪な声が後ろから聞こえる。


「可愛いね…」