その日の弓道部での練習も集中力を欠いた私は、顧問の先生にダメ出しをされてしまい、後半の練習ではグランドを走ってくるように指示された。
弓道部員のうち何人かも私と同じように練習に身が入らない人たちがいて、彼女たちと共にひたすらグランドを走った。
夕暮れ時のグランドを走っていると、ちょうど私のいる場所から渡り廊下が見渡せることに気がついた。
その渡り廊下には偶然にも芦屋先生がいて、彼は手すりにもたれて缶コーヒーを飲んでいるようだった。
授業以外であまり見かけない芦屋先生の姿を見つけて内心嬉しかったけれど、その反面必死に走っている姿を仮に見られてしまったら恥ずかしいな、とそんなことを考えてしまった。
先生はボーッとした様子で、ひたすら何もせずそこに立っているようだった。
━━━━━もしも。
もしも、この走り込みが終わってもまだ芦屋先生があの渡り廊下にいたら。
そしたら、なんでもいいから話しかけにいってみよう。
密かに決意して、グランドを走った。