「えっ、あ、はい」
とりあえず返事はしたものの何も聞いていなかったことを全力で後悔し、
「す、すみません……聞いてませんでした」
と目を伏せた。
徳山先生は無表情のまま「そうですか」と言うと、他の生徒に質問を移し替えた。
やってしまった。
昨日のことで頭が舞い上がってしまい、集中力に欠けている。
すると、小声で「バーカ」という声が後ろから聞こえてきた。
チラッと後ろを見ると、思った通り真司だった。
彼は私が注意されたのがよっぽど面白かったのか、今にも大声で笑い出しそうな顔をしていた。
悔しいけれど、何も言い返せない。
すると徳山先生の冷ややかな声がした。
「じゃあ倉本くんにも質問をしますか。人を冷やかす余裕があるようなので」
「え……」
真司の顔からサッと笑顔が消える。
教室内でクスクス笑いが起きていたけれど、さすがに他人事とは思えなくて私は笑えなかった。