「大丈夫です。ほっといてください。もう、何も関係ないんだから」


こんなことを言いたいわけじゃなかったのに、次々に自分の口から溢れ出す本心じゃない言葉たち。


「ごめん……」


芦屋先生はとても申し訳なさそうに、目を伏せた。


そんな顔をさせたかったんじゃない。


私の胸は張り裂けそうなくらい痛くて、自分でもよく分からなかった。


「落とし物、探しておくから。何を落としたのかだけ教えて」


先生が一生懸命笑おうとしているのが見えて、私は涙をこらえ切れなくなった。


「もういいんです!もういらない!」


私は吐き捨てるように先生に言葉をぶつけて、泣きながら美術室を出た。


もういらない。
もういらない。


思い出なんて言って、大事にしない。


先生にもらったものなんていらない。


何もいらない。


渡り廊下を抜けて校舎へ駆け込み、溢れ出す涙を拭う。


拭っても拭っても、どんなに拭っても、涙は止まらなかった。


やっぱり涙って枯れないんだ。
いくらでも湧いてくるんだ。


悲しいことがあればいつでもこぼれる。


廊下にしゃがみこんで、ひたすら泣いた。