「付き合ってる人は、いる?」


え?


先生からそんな質問をされるとはまったくもって想像もしていなかったので、耳を疑った。


暗がりでも芦屋先生の表情はよく見えて、とても穏やかな顔をしていた。


「い、いません…」


どうにか答えをしぼり出すと、今度は質問を変えてきた。


「好きな人は?」


それらの質問を、私はよく知っていた。


私が数ヶ月前に、同じ2つの質問を先生にしたからだ。


そして、その時芦屋先生は


「気になる人は、いる」


と言っていた。


どうして私に同じ質問をするの?
変に期待しそうで、そんな自分が恥ずかしくてたまらない。


「好きな人……います」


私がおそるおそる答えると、先生は少しうつむいた。


「俺も、好きな人がいる」


ドキンドキン、と私の胸がうるさいくらいに鳴り出した。


その鼓動は自分の耳に直接聞こえてくるような錯覚に陥るほど、うるさく鳴り響いた。