「徳山先生にすべて聞いた。相川さんのこと、彼女の元彼のこと。1人で帰ると言って聞かなかった吉澤さんのこと」
芦屋先生にしては珍しく少し意地悪な言い方だったので、私は思わず「すみません…」と肩を落とした。
「前に言ったよね?困ったことがあったら相談してねって。今回は怪我も無かったから良かったけど…」
まだまだ続きそうな説教に、私の胃は縮まる思いだった。
どうして今日はこんなに注意してくるのだろう?
いつもの芦屋先生ならすぐに話を切り上げそうだと思ったのに。
そこまで考えて、違う、と気づく。
それくらい今日のことは、身の危険を感じるくらい危なかったということだ。
もう二度と同じようなことが起きないように、私に念を押してくれてるのだ。
「芦屋先生」
私は運転している先生に視線を送る。
先生は運転しているので、私のことはまったく見ていない。
本当はすぐにでも言わなければいけなかった言葉。
「助けてくれて、ありがとうございました」
先生はニコッと微笑んで、
「どういたしまして」
とつぶやいた。