━━━━━帰りの車の中で、私は芦屋先生に抱きしめられた時のことを思い出していた。


ほんの短い時間だったけれど、確かに先生は私を抱きしめてくれた。


どうしてなのかな。
でも理由を聞くのはおかしいかな。


静かな車内で、芦屋先生が


「さっきはごめんね」


と謝ってきた。


「え?」


まさか、抱きしめたこと?


私はドキンと胸が鳴った。
不安が押し寄せそうになった。


謝られたら、切ない。


無かったことにされてしまうような気がして、切ない。


すると先生は私の思惑とは違う言葉を言った。


「あんなに大きな声で怒鳴ってしまって、本当にごめんね。怖かっただろうと思って」


「あ……」


そういえば、今日私は芦屋先生が本気で怒った顔を見たんだった。


あれは、きっと私のために怒ってくれたんだ。


「私が悪いから、怒られても仕方ないんです。先生、私に呆れちゃったよね」


「呆れてなんかないよ」


先生はすぐに否定してくれた。