何が起きたのかすぐには分からなくて、私は顔を何かで覆われて目をつぶった。


そして分かった。


芦屋先生に抱きしめられているということを。


先生の体に私の顔がすっぽり隠れるように、ギュッと抱きしめられていた。


そして、小さい声で先生がつぶやいた。


「無事で良かった」


先生のシャツからは、絵の具の匂いがした。


怒ったり、心配したり、私を抱きしめたり、今日の先生は目まぐるしく変化していて、心が追いつかない。


震えていたはずの手が元に戻っていることに気づいた私は、静かに先生の背中に手を回した。


夢じゃない。


私は今、大好きな芦屋先生に抱きしめてもらってるんだ。


言いようのない安心感を感じた。