「吉澤さん!」


と、私の耳に聞いたことのある声が届いた。


こんな時に幻じゃないだろうかと疑ってしまったけれど、幻でも夢でもなく、私に駆け寄ってきたのは芦屋先生だった。


「せ、先生……どうして」


どうしてここにいるんですか?


と聞きたかったのに、その前に腰を抜かして地面に座り込んでしまった。


芦屋先生は私のそばまで来ると、焦ったような顔から怒った顔に変わった。


「どうして1人で帰ったんだ!」


先生の怒った顔。
そして怒った声。


初めて見た。
初めて知った。


こんな風に怒るんだ。


どんなに授業で生徒がしゃべっていても、遅刻したりしても怒らない芦屋先生。


私に、怒った。