澪はこんな思いを、ずっとしてきたんだ。


身動きが取れない中、でも澪のことを彼に言ってはいけないとそれだけは思った。


友達を危険にさらすくらいなら、と私は何も言わずに目をつぶった。


「いい加減にしろよ!」


彼の怒号とともに、掴まれていた腕に力が込められていくのが分かった。


痛い、痛い。
もうなにもかも終わりだ。


そう思った瞬間、鈍い音がした。


そして、あっという間に拘束されていた私の腕が解かれる。


何が起こったのか分からなくて、ゆっくり目を開けた。


トントントン……とそばに野球ボールが転がるのが見える。


そして私を押さえつけていた、あの彼はその場に倒れていた。