茶髪の彼はとても怒ったような顔をしていて、私に食ってかかるように怒鳴ってきた。
「お前、澪を連れてこい!」
響き渡る怒鳴り声で、私の心臓かドクッと跳ね上がる。
あまりの恐怖に声も出ないし、動けなかった。
何も言わない私にイラついたように、彼は足元に落ちたバッグを蹴り上げた。
バッグの中に入っているお弁当箱が、またガシャンという音を立てて私の足に当たる。
さすがに鈍い痛みを感じた。
「おい、お前早く答えろ」
今度は彼の声は怒鳴り声ではなく、脅すような低い声に変わっていた。
「し、知りません……」
やっと口に出来た言葉は、自分でも驚くほどかすれてか細い声だった。
私の返事が気に食わなかったようで、彼は舌打ちをすると急に私の両腕を捻るように掴み、そばにあった背の高い塀に押しつけてきた。
「ちゃんと答えろ。お前の腕、折ったっていいんだからな」
近い距離で彼の恐ろしい目を見て、信じられない言葉を聞いて、私はもうダメだと思わずにはいられなかった。