菊ちゃんや他の部員たちがゾロゾロ帰る中、私もゆっくり支度してから更衣室をあとにした。


12月後半ともなれば、日が暮れるのもあっという間になった。


真っ暗になったグランドには生徒の姿は無く、横切って通過して校門を出る。


念のため、昨日澪の元彼の拓人という人が私たちを待っていた場所を遠目で伺ってみた。


そこには誰もいなかった。


しかし足元にはタバコの吸殻が何本かあって、それが昨日のものなのか今日のものなのか分からなかった。


ついいつものクセで駅までの近道である、人通りの少ない住宅地を通る。


ポツポツ灯っている外灯の明かりをたどりながら駅に向かって歩いていると、いつの間にか後ろから誰かの足音が聞こえてきた。


誰か同じ高校の生徒だろうと、その足音に対してまったく警戒すらしていなかった私の背中に、何か硬いものが突然当たった。


そんなに痛くはなかったけれど、あまりに突然だったのでびっくりして振り返る。


当たったものが、ガシャンという音を立てて地面に落ちる。


それは私が昨日、澪の元彼に投げたお弁当箱が入った手提げバッグだった。


「えっ……」


すぐに顔を上げると、そばに澪の元彼の男の人が立っていた。