私と菊ちゃんが学校へ登校すると、生徒用の玄関口に徳山先生が立っていた。


徳山先生は私を見つけるなり、まっすぐにこちらまで歩み寄ってきた。


「吉澤さん」


声をかけられて、私は返事をするのも忘れてただただ驚いたまま徳山先生を見ることしか出来なかった。


隣の菊ちゃんが興味津々の顔で私たちを見比べているのが分かる。


いや、菊ちゃんだけではない。


登校途中の生徒たちが私と徳山先生に視線を送っていた。


学校一、女子に人気のある先生が私個人を待ち伏せしていたとなれば、それは確かに目立つだろう。


「ちょっとこちらへ来てください」


徳山先生は周りの視線などまったく気にすることもなく私についてくるよう、促すのだった。


徳山先生のあとをついていくと、朝はあまり人の少ない渡り廊下のあたりまでやってきた。


先生が言いたいことは分かっていた。


昨日の澪のことだ。


「昨日は澪をかばってくれてありがとう」


予想通りの言葉を言われて、私は首を振った。


「私は何もしてません」


そんな反応をした私に向かって徳山先生は、いや、と前置きをして頭を下げてきた。


「それだけじゃない。謝罪しなければ。1人の時にしか現れないと言ったのは私だから。申し訳なかった」


「そんな、全然気にしてないです。それよりも澪は大丈夫ですか?昨日とてもショックを受けていたから……」


私がそのように言うと、徳山先生は顔を上げて神妙な面持ちでうなずいた。


「明日から冬休みだし、とりあえず今日私の仕事が終わったら2人で警察に行くことにしたよ」


「そうですか……良かった」


警察に協力してもらって、あの元彼の対策を立てられるならその方がいい。


私が安心していると、徳山先生が心配そうな表情を浮かべて


「君も気をつけて。あの手の男は何をするか分からないから。今日は1人で帰らず、誰かと帰るように」


と言った。