「明日は無理言って透のこと待ってることにする。これ以上萩に迷惑はかけられないから……」


「そう……」


私は迷惑だなんて思っていなかったけれど、こんな風にあの男の人に追いかけられたりするのなら、やっぱり徳山先生にそばにいてもらった方が断然安全だ。


不安になっている澪を支えてあげられるのは、間違いなく徳山先生に決まっている。


私と澪は、それからあまり会話をせずに駅まで歩いた。













「追いかけられたぁ!?」


翌朝、昨日の話を菊ちゃんにすると、彼女は心底驚いたように目を丸くしていた。


「ちょっとぉ、それ本当に危ないやつじゃん!」


「うん、そうなの……。だから、澪は今日は彼氏と帰ることにしたみたい」


徳山先生が澪の彼氏だということは菊ちゃんに悟られてはいけないので、詳しくは話さない。


菊ちゃんは特に疑問にも思わなかったようで、「それならよかった」と胸をなでおろしていた。


「萩は?大丈夫だったの?」


と、菊ちゃんは私のことまで心配してくれた。


「私はお弁当箱無くしちゃっただけで、なんにも」


怖くなかったと言えば嘘になるけれど、もう澪は徳山先生と帰るし私も安心しきっていた。