「ウッ」
といううめき声がして、それきり足音が聞こえなくなった。
私と澪は後ろを確認することなく、そのまま走り続けた。
はぁはぁ、と澪の苦しそうな息づかいが増してきたところで私は彼女に声をかけた。
「大丈夫だよ。きっともうついてきてない」
私は怪我明けとはいえ、弓道部で走り込みなどをしていたので体力には自信があったけれど、澪は帰宅部で普段運動をしていないからか体力の消耗が激しかった。
「う……、萩…………」
やっと立ち止まった澪の顔は涙に濡れていた。
「ごめん……巻き込んじゃって。ありがとう……萩がいなかったら、私……」
澪はそう言って私の肩に顔をうずめた。
澪が感じた恐怖は計り知れなかったと思う。
私だって怖かった。
でも、澪に比べたらきっとそれは比じゃないはずだ。
私は自分の震える手を頑張っておさえて、澪の肩を何度も優しく撫でた。