2人で暗くなったグランドの脇道を通り、校門を出る。


すると校門から少し進んだところに、黒いジャケットを着た茶髪の背の高い男の人が立っていた。


私たちを見つけると吸っていたタバコを足元に捨てて、靴で火を消した。


何も考えずにその人の横を通り過ぎようとした時、隣りの澪が立ち止まった。


「拓人……」


たくと?


私が短い言葉の意味を聞き返そうと澪の顔を見ようとした瞬間、素早く澪に強い力で腕を引かれた。


「走って!」


澪は私を引っ張るように男の横をすり抜け、ぐんぐん加速していく。


なにがなんだか分からないまま、私はチラッと後ろを振り返る。


さっきの茶髪の男の人が追いかけてきていた。


瞬時に分かった。
あの人が澪の元彼。


「澪、待てよ!」


と響くような、怒鳴るような声で澪の名前を呼んでいた。