「私が毎日ちょっとずつ傷が増えてくの、透が気づいてくれたんだ」


校門を出て駅まで歩く道のりで、澪は徳山先生の話をしてくれた。


「それまで私のことなんて生徒の1人にしか見てなかったと思うんだけどね。本当に突然、無愛想な透が私に話しかけてきて。その傷は転んだものではないだろって」


「どうしてすぐに別れなかったの?」


暴力をふるう恋人からすぐに逃げなかった澪のことが理解出来ず、私は即座に尋ねた。


彼女は少し悲しげに微笑むと


「あの時の私はどうかしてたんだ。彼を放っておいたらダメになるから、私が支えなきゃって」


と答えた。


1度は好きになった人だから、信じたかったのかもしれない。


「透と付き合うようになって、元彼も諦めたと思ってたんだけど……。この間偶然、駅前の携帯ショップでばったり会っちゃって。そうしたらいつの間にかストーカーみたいなことしてくるの」


私の耳に聞き慣れない言葉が飛び込んでくる。


ストーカーなんて、本当にいるんだ。
ドラマでの話でしかないと思っていたのに。


なんだか少し怖くなってしまった。