いつも一緒に帰っていた菊ちゃんには、誰にも言わないという約束で澪のことを話した。


徳山先生に頼まれたとはもちろん言わず、澪の元彼がつきまとっていて1人の時を狙っているようだから、冬休みまでの1週間だけ彼女と帰ることにしたと、それだけ伝えた。


菊ちゃんも澪とは面識が無いため、3人で帰ろうということにはならなかった。








澪は私の部活が終わるまで待っていてくれて、学校の玄関で待ち合わせすることにしていた。


初日の澪はとても申し訳なさそうにしていた。


「萩、ごめんね迷惑かけちゃって。今朝、透から萩に一緒に帰るように頼んだって聞かされて……」


「謝ることなんてないよ。2人でいれば話しかけてきたりしないんでしょ?」


私が靴を履き替えながらそう言うと、彼女は小さくうなずいた。


「ありがとう」


澪はいつもの様子と違っていた。


私みたいな鈍感な人間でもよく分かるくらい、怯えていた。


彼女は元彼にどんなに酷いことをされてきたのだろう。


とても可哀相で、とても苦しんでいるように見えた。