少ししてようやく笑いがおさまったのか、また表情のない顔で私に近づいてきた。


「あの時のお礼をしてもらわないとと思っていました」


「お礼!?」


私はびっくりして目を丸くして徳山先生を見つめた。


確かに1ヶ月前の台風の日、徳山先生のおかげで芦屋先生と帰れることにはなったけれど、お礼を要求されるとは思ってもみなかった。


瞬時に徳山先生と澪が資料室でキスしていたあの光景を思い出してしまった。


何ヶ月経ってもあの光景は衝撃的すぎて忘れられなかった。


私は慌てて自分の体を自分の腕でガードするように身構えた。


「わ、わ、私、何も出来ません!」


「君さぁ」


徳山先生は呆れたように私を見ている。


そしてこの私の発言が彼の笑いを誘ったらしい。


顔をうつむかせて肩を震わせ、また笑いをこらえていた。