「じゃあさっきの倉本くんだっけ?あの人とデートしてたのはなんで?」


のぞき込んできた彼女の目と私の目が合う。


そういうことか、と私は思った。


「徳山先生に聞いたんだね」


私が悟ったようにつぶやいたので、澪は静かにうなずいた。


「昨日、透に聞いた。ちょうど1ヶ月前くらいに見かけたって。しかも手を繋いでたっていうから聞き捨てならなくてさ」


やっぱり手を繋いでいるところを徳山先生に見られていたんだ。


あの時の自分は、芦屋先生のことで悩んで悩んで、真司に気持ちが傾きかけていて、手を繋ぐということもなんとなく拒否できなくて。


だから、思い出すと罪悪感に駆られてしまう。


「あれは……事情があってね」


私がしっかり最初から説明しようとすると、澪はまるで説明なんていらないというように手を振って、


「おおかた予想はついたから言わなくていい」


とため息をついた。