隣の教室に生徒は誰も残っていなかった。


台風の威力が増してきているのもあって、ほとんどの生徒は帰路についている。


校内にいる生徒は私たち実行委員会くらいかもしれない。


「話って?」


真司は聞いてから、私の言葉を待たずに


「嫌な予感するんだけど」


と眉を寄せた。


「だってずっと中途半端な状態なのって真司に申し訳ないから」


私がそう言うと、彼はまたそれかというような顔で


「お前が言おうとしてること、当ててやろうか」


と返してきた。


そして急に冗談めかした口調になり、私の真似のつもりなのか瞬きの回数をわざと多くして両手を目の前で組んだ。


「わたしぃ、やっぱり先生のことが好きだからぁ、真司の気持ちには応えられないのぉ。ごめんなさぁい」


「ちょっと、真司。なにその話し方!」


私はそんな話し方もしないし、そんな仕草もしないぞ、と内心思いながら言い返す。


ムキになる私を見て笑った真司が、


「でも、そういうことを言いたかったんじゃないの?」


と聞いてくる。


確かにその通りなんだけど。


こんな風に茶化しながら言われるとは思ってもみなかった。