芦屋先生の横顔をボーッと眺めていると、ふと先生が顔を前に向けたまま私に聞いてきた。
「怪我はどうなの?」
ズキンと痛む左手を無意識に隠した私は、
「足首は捻挫で、テーピングで固定してもらいました。脇腹は……まだわからないんですけど、肋骨にヒビが入ってるかもね、って」
と笑って答えた。
すると、赤信号で止まった時に芦屋先生がくるっと私の方を向いてきた。
「吉澤さん。どうして今笑ってる?」
「え?」
「楽しくて笑ってるわけじゃないよね」
芦屋先生が言いたいことってなんだろう?
しばらく沈黙が続いた。
「怪我をした直後も、そうやってみんなに心配かけないように笑ってたなって思い出したから」
と先生は言いながら、青信号になった道路を発進した。
もう先生は私の方を見てはいなかった。