「んー…爽ちゃんと話してたらスッキリ出来た気がするなぁ…熱も引いたし。」
「え?」

スッキリ出来たのはともかく熱が引いたって…

「風邪でも引きましたか?」

その言い方だと熱が今まであったように思うのですが。

「あ、えっと…大したことじゃないよ?うん。」

真夜はそう言いながら目を反らし、そして自分の頬をすりすりと撫でて…その頬はどこか赤いような気がしなくもないような…

「なら良いのですが…」

本人が大丈夫なら良いか。という考えに達し、僕はこれ以上彼女に質問をすることをやめて。

「では帰りましょうか。」

手を真夜に差し出した。

「う…」

真夜は少し躊躇い気味に手を僕に差し出して、繋ごうとはするけれど決して繋がず、もどかしいことを何度も繰り返す。
いつもならイライラするところだけれど、今日は全くイライラが来なかった。
変わりに少し不思議な…モヤモヤとした気持ちが頭を掠めてくる。

「…ほら。」
「あ…」

自然と僕の手はそんな真夜の手を握り、足は帰路を歩き始める。

「爽ちゃん足速い…」
「お腹空いたので早く帰りたいんですよ。」
「そっか…って、買い物行ってない…!」
「え?」

子供の頃に完全に戻れたような、そんな気分になった。

「…どうしよう?」
「…とりあえずおじさんに連絡を入れましょう。」

この手は一生離れてはくれないような、そんな自惚れたような気分になれるほど、僕はこの手の温もりに幸せを感じていた。