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おじさんはまだ病院に用事があるらしく、真夜に心配を掛けさせないように僕だけが家に帰された。
帰りづらいだなんて言えなかった。面倒を見てもらっている分際で家頭の人間に文句だなんて言えっこない。

(何で焦っていたんだろ…)

真夜にあんなことを言ってしまった時、『早く行かなきゃ』という気持ちでいっぱいだった。しつこくなる前にばっさりと斬ってしまえば開放してくれるとか思ってしまって…結果彼女を傷つけてしまった。
今日の僕はどうかしている。いつも通りに戻らないと。
そう言い聞かせて向かった先は、彼女の母親が事故に遭って亡くなってしまった場所だ。真夜は嫌なことがあると母親が死んだ場所に行って、彼女が最期に見たという景色を見る。そこに行って母親を感じて、慰めてもらうらしい。
『父親に弱音は吐けない。自分は常に笑顔でいなくてはならない』…それを聞かされた時、僕と同じだと共感した。
僕らは弱いところを見せてはいけない。だから、強がらなくてはならない。
僕と彼女は似た者同士。互いに寂しさを補える関係というものが、僕達が一緒にいる理由。
どちらかが離れればどちらかが悲しむ…だからいつも、常に一緒。

「真夜?」

花が置いてあるその横に、棒付き飴を舐めて道路を見つめる真夜の姿を発見した。
声を掛けると、僕を見上げて目を点にさせるが、すぐに視線は反らされてしまう。

「真夜…」

気まずそうだ。僕もそんな真夜を見てしまうと気まずくなってくる。

「…飴玉、何味ですか?」

隣に腰を下ろして、真夜に質問をしてみる僕。
真夜の細い肩に僕の肩が触れて。彼女の体が少しだけ震えた。

「い、イチゴ…」

控えめに質問に答えてくれた。けれど、くっついている肩は離れてしまう。
…嫌だよな、拒絶した人間のことなんて。しかし僕は彼女に触れたくて、離れた肩に手を伸ばす。

「クリームさんがくれたんですか。」

何となくそんな気がした。彼は真夜を気に掛けているからお菓子ぐらいはプレゼントをするのでは?
真夜を見れば顔は反らされたままなものの、僕の質問に首を縦に振って。人物を肯定した。