だけどそれが、ものすごく愛しく感じちゃうから不思議だと思う。


「……ホント、俺灰音ちゃんに弱い」

「先輩は皆に弱いんじゃないですか?」

「違いますから。俺だって、強いときはあるよ」

キスする時に離れた体をまた抱き寄せて、口を尖らせながらそんな風に言った。


「…ただ、」

戸惑うように一度瞳を泳がせて、
だけど意を決したように口を開く。


「灰音ちゃんがそんなふうに笑うから、何にもいえなくなっちゃうだけ」

あはは、と苦笑いにも近い笑顔を浮かべて言った。

……あぁ、もう本当に。

この人はいろいろ抜けてるところがあるけれど、全部が人を惹き付ける魅力があるんだ。


優しくて格好良くて頭が良くて運動神経抜群で。

そこまでだったら王子様みたいなのに、
子供みたいで無気力。

そんな九条彼方先輩に、あたしは恋をしたらしい。



ー完ー