「いやいや、ここに来たのが運のツキ!俺の話し相手になってもらいまーす」
「無理です!まだ命は惜しいんです!」
「却下!」
却下ってなんですか!
立ち上がって歩きかけたのに、腕を掴まれて抜け出せなかった。
強引すぎるその行為に観念して、座り込んだ。
あぁ、誰も見ないでください。
叶うような叶わないような願いを心の中で唱えながら、じとっと先輩を睨みつける。
「で、君は?」
「……七瀬灰音です」
「灰音ちゃんね。俺のことは彼方ちゃんって呼んでね」
「嫌です」
即答するのー?、なんて口を尖らせているけれど、気にしない。
そんな、いろんな意味でぞっとするような呼び方なんでできるわけないし!
しかもなんであたしのことをいきなり名前呼びなんですか。
突っ込みどころが多すぎて、突っ込まない方がいいかもしれない。