「でも付き合うとかそういうの、わかんないし。一緒にいればなくなる思いなのかもわかんない」
そこで先輩は言葉をきって、しばらく後に小さく呟いた。
寂しそうで悲しそうな、そんな笑顔で。
「――…だから、やっぱ俺に近付かないで」
さんざんいろいろ掻き乱しておいて、最後に自分から突き放す。
そんな理不尽で自分勝手なことをして、
九条先輩は去っていった。
歩く速度はさっきよりもずっとゆっくりで。
なんでそんな勝手なんですか!
と追いかけて行くのは簡単なのに。
最後に悲しそうな笑顔で呟いた言葉が、
本当の別れの言葉みたいで
立ち尽くしたまま、動けなかった。
一筋の風がそっと吹き抜けて窓を見ると、
寂しいくらい分厚い雲が太陽を隠していた。